■ 能力があって資格が生きる
高齢者の働き口がなかなか増えない理由のひとつに、企業が必要としている能力を身に付けないまま就職活動を行っていることがあげられます。総務省の調査では、定年退職に際してやっておけばよかったこととして、「公的な資格の取得」や「定年後も生かせる専門的な技術の習得」が上位を占めています。
別の調査では、企業による高齢者の能力評価として、「技術・職能を要する作業」「対外調整・折衝」「管理・監督」などが高い評価を得ています。
また、企業の人事担当者に行った調査で自社のどのような分野で高齢者の雇用機会が生まれるかのアンケート(2つまでの複数回答)では、「専門的・技術的な業務」と答えた割合が70%と一番多くなっています。
したがって、本格的な収入を得たい、有利な条件で働きたいというのであれば、現役時代のキャリアに関連した資格にチャレンジしてみることがお奨めです。
■ 自分のキャリアを振り返ってみよう
たとえば、会社で人事畑や法務畑を歩んできたなら、社会保険労務士や行政書士を目指すことは可能といえます。
営業畑なら販売士、経理畑は税理士、金融機関に勤めていればファイナンシャルプランナー、またIT畑であればシステムアナリストなどにも挑戦できるでしょう。
すぐに思いつかなければ、自分の「棚卸し」をしてみることです。仕事を始めてから何をやってきたか、会社の仕事以外では何に興味を持ってきたか、家庭や地域では何を経験してきたかを順番に振り返ってみるのです。
できれば紙に書いてでもやってみると、自分は何をやってきたか、何に関心があるのかを発見することができるかも知れません。
■ 反復学習のすすめ
定年後の資格取得にはコツがあるようです。悲しいかな若いころと違って記憶力の低下はいかんともしがたいものがあります。でも、そこであきらめない!ことが肝要です。
忘れたら何度でも覚える。一度覚えたところでも何度でも繰り返す。これが鉄則のようです。50台で資格の取得に成功した人たちの多くが強調しているところです。
反復学習をするためにはやはりそれなりの努力も必要です。反復学習をする時間を確保するためには在職中であれば通勤時間を活用したりするのが一般的でしょうが、退職後はきちんと日課に組み込んでおかないとだらだら過ごしてしまう可能性もあります。
強制的に日課を守るようにするには資格取得のための学校に通うのも賢明なやり方です。費用はかかりますが勉強時間を確保できますし、同じ仲間と情報交換できるメリットもあります。
■ ハローワークを活用する
ハローワークでは職業技術専門学校も紹介してくれます。一定の職業訓練を受けたら職業を斡旋までしてくれます。高齢者向けの訓練も用意されています。
東京都のキャリアカレッジを見てみると、入行は4月、7月、10月、1月の年4回です。昼間と夜間があり、期間は科目によって2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のコースとなります。
科目は、ビル管理、インテリアリフォーム、電気設備管理、ビジネス経理、経営管理業務、庭園施工管理、施設警備、ホテル・レストランサービスなどがあり、全て無料となっています。
またこの職業訓練を失業中に受ければ色々なな優遇措置が受けられます。
・受講中は訓練が終わるまで失業していれば給付日数が2年まで延長される。
・入校のため待機している場合は、90日まで基本手当てを受けられる。
・訓練が終了しても就業できない場合、30日まで基本手当てを受けられる。
・受講手当や通所手当(交通費)も毎月支給される。
と、勉強しながら給料をもらえるような仕組みになっているので、これをうまく使えば一石二鳥の効果が期待できます。
【50代でも間に合う主な資格】
■ 怪しげな資格や学校には注意しよう
名前の通ったところや過去に実績を積んでいるところは大丈夫だと思いますが、中には受験料や受講料を狙った悪質な商売があります。
また資格そのものも怪しげなものが出てきていますのでじゅうぶん注意が必要です。「数時間で資格がとれます」というように甘い言葉で勧誘されたときはまずは疑ってかかる方が無難かと思われます。
■ ときには山頂手前で引き返す勇気も
中には何回受けても通らない難関資格もあります。くじけそうになったときに気持ちを持ち続けるのは大変なことで、特に独学ではなおさらです。そんなときは、目指す資格を取得し仕事に就いている自分を頭の中で思い浮かべてみるのもいいでしょう。
ただ、資格を取得する以上に自分の健康を保つことは、定年後の生活の中で最も重要なことだと思います。体を壊してまで時間を削ったり食事をおろそかにしたりしては元も子もなくなってしまいます。一旦休むとか、撤退して進路を変更する勇気も必要になる場合があることを常に忘れずにいたいものです。
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