相続

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◆ 相続が「争族」にならないために ◆


相続の仕組みを正しく理解しましょう


遺産相続で問題が起こるのは資産家だけだからウチには関係ない、などと思っているとあとで思わぬトラブルに巻き込まれかねません。
自宅を所有していればそれも遺産になりますし、遺産をめぐって肉親と骨肉の争いが起こることも珍しくありません。そんな「争族」を避けるためにも相続の仕組みをしっかりと把握しておきましょう。

 
相続とは
  相続とは、人の死によって死んだ人の財産・権利などが特定の人に受け継がれる
  ことをいいます。死亡した人を被相続人、遺産を引継ぐ人を相続人といいます。
 
  相続は被相続人が死亡した時点でスタートします。また死亡でなくても失踪から
  7年が経過した時から相続が始まります。
 
  相続人になれる人は法律で定められています。(これを法定相続人といいます)
  配偶者は常に相続人になります。他の家族は相続の順位が決まっています。
 
  第1順位=子供・孫(直系卑属)→第2順位=親・祖父母(直系尊属)→第3順位=
  兄弟姉妹の順位で、順位の高い人がいるときは順位の低い人は相続人になることは
  できません。(第1順位の相続人がいる場合は父母・兄弟姉妹は相続人になれませ
  ん)







借金が多ければ相続を放棄する
  相続は財産を家族に受け継いでもらうことですが、財産のなかには「負の財産」と
  いわれる借金も含まれます。そのため相続人には「相続しない」選択権も与えられ
  ています。
 
  財産を受け継ぐか、受け継ぐのを拒否するかは具体的には次の3つの選択肢と
  なります。
 
  ≪単純相続≫
   財産も借金もすべて引継ぐ方式です。
 
  ≪限定相続≫
   相続によって得た財産の限度においてだけ被相続人の債務を弁済する相続形態
   です。相続財産がプラスかマイナスか不明の場合にこの制度の効果が発揮される
   ことになります。
 
   清算の結果として、債務が残れば責任を負わなくていいし、財産が残ればそれを
   相続できます。ただし手続が煩雑であり、この方式がとられることは少ないのが
   実態です。
 
  ≪相続放棄≫
   被相続人の財産一切を受け継がないというものです。マイナスの財産が大きい
   ときなどよく選択される方式です。  



相続遺産の配分
  親が亡くなったとき、あるいは自分が亡くなったとき、遺産がどのように分割され
  るのか予め知っておきましょう。特に相続人が複数いるときは分け方が問題になり
  ます。もし遺言を遺されていなければ、法律で定められた法定相続分に沿って分け
  方が決まります。
 
  ≪配偶者と子供が相続する場合≫
   配偶者と子供が2分の1ずつ相続します。子供が複数いる場合はその2分の1を
   さらに人数で分けます。
 
  ≪配偶者と親が相続する場合≫
   子供や孫がいない場合、被相続人の父または母がいれば配偶者と父または母が
   相続人になります。
   配分の割合は配偶者が3分の2、残り3分の1を父母で分けることになります。
 
  ≪配偶者と兄弟姉妹が相続する場合≫
   配偶者がいて親・子供がいない場合、第3順位である兄弟姉妹に相続する権利が
   生まれます。配分の割合は、配偶者が4分の3、残り4分の1を兄弟姉妹で分け合
   うことになります。
 
   亡くなっている兄弟姉妹がいたらその子供が代襲相続人となります。(その場合
   は他の兄弟姉妹の2分の1)





■ 相続人に遺産を受け継がせたくないときは「廃除」できます
  もし相続人のなかにどうしても財産を与えたくないと思う人物がいたときは
  どうしたらいいのでしょうか。
 
  一つの方法は、生前に家庭裁判所に対し「廃除」の審判を申し立てます。
  廃除を行う要件としては
 
    @ 相続人に対し暴力をふるうなど虐待や重大な侮辱があったとき
    A その他、著しい非行があったとき
 
  などです。
  
  また、相続人の廃除については遺言によってすることも可能です。
  尚、「廃除」の対象となるのは遺留分をもっている推定相続人(配偶者、子供、
  父母など)です。




遺留分は最低限の資産の取り分
  遺留分とは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の相続人に認められた、最低限の
  保障です。
 
  相続人の受ける相続分は、法律上「法定相続分」として一定の割合が定められて
  います。
 
  一方で法律は、遺言による死後の財産処分を認めています。遺言者は「全財産を
  アカの他人の誰々に譲る」という遺言を書くことも可能なのです。
 
  しかし、もしこの遺言がそのまま実現されると、残された家族は途方に暮れること
  になります。元々は遺言者の財産ですから、遺言者の思い通りに処分できて当然と
  いう考え方もありますが、そのために遺族の最低限の生活にも困ることになっては
  片手落ちです。
 
  そこで法律は、遺言による財産処分を認めながらも、家族をかえりみないような
  行き過ぎた遺言による悲劇を防ぐために、一定の歯止めを設けました。それが
  遺留分という権利です。
 
  もともとの法定相続分よりは少ない割合になりますが、遺留分は法的権利として
  主張することが出来るのです。
 
  総体的遺留分としては

  ・直系尊属のみが相続人の場合、遺産総額の3分の1
  ・それ以外は2分の1となります。 

法定相続人の遺留分
法定相続人 遺留分(遺産に対する割合)
配偶者のみ 2分の1
第1順位 配偶者と子 2分の1(配偶者1/4 子1/4)
子のみ 2分の1
第2順位 配偶者と父母 2分の1(配偶者1/3 父母6/1)
父母のみ 3分の1
第3順位 配偶者と兄弟姉妹 2分の1(配偶者1/2 兄弟姉妹0)
兄弟姉妹 なし

個々の遺留分はこの総体的遺留分に各相続人の相続分比率を乗じて算出されます。




遺言書の書き方
  遺言を遺すにはトラブルを避けるためにルールが決められています。その遺言が
  被相続人の意思を示したものかどうかが一番のポイントとなるため、書面も定め
  られた方式に沿ったものでなければ無効となってしまいます。
 
  ≪普通方式の遺言≫
  (1)自筆証書遺言…遺言者が全部自筆で書くもの。
  (2)秘密証書遺言…遺言の内容は自筆でもタイプ(ワープロ)でもよいが、遺言
            者の署名押印がいる。2人以上の証人の立会のもと、公証人
            に証明してもらうもの。
  (3)公正証書遺言…遺言者が口頭で公証人に口述して作成してもらう。2人以上
            の証人の立会がいる。
 
  ≪特別の方式≫
  (1)一般危急時遺言(臨終遺言)
     死亡が間近に迫った人が遺言しようとするとき、証人3人以上の前で口述
     し、証人の1人が筆記し、立ち会った証人がその内容を承認し署名し印鑑を
     押したものです。遺言の日から20日以内に家庭裁判所に提出し、家庭裁判
     所が遺言の内容が本人の真意であると判定しないと無効となります。
 
  (2)伝染病隔離者の遺言
     伝染病のため隔離されて人の行き来がない場所にいるとき、警察官1人、
     証人1人以上の立ち会いで遺言書を作成することができます。(伝染病以外
     の理由でも刑務所内にいるとか行政処分を受けているときも同様とされま
     す)
 
  (3)船舶内の遺言
     船舶中にある人は船長または事務員1人に証人2人以上の立ち会いのもとで
     遺言書を作成できます。
 
  (4)船舶遭難者の遺言
     船舶遭難の場合、船舶中で死亡の危険が迫った人は、証人2人以上の立ち
     会いのもとで口答で遺言できます。ただし、証人はこれを筆記して署名、印
     鑑を押して家庭裁判所の確認を得ないと効力をもちません。
 


このうち自筆証書遺言は遺言の内容を全部
自筆で書き、最後に日付、署名、押印があれ
ばよく、最も採用されることが多い方法です。
 
ただし代筆やパソコン文字は無効となり、さら
に遺言が複数枚にわたる場合の割印を忘れ
たり、訂正方法を間違えると様式不備で無効
になることもあるので注意が必要です。
そこで最近では公正証書遺言を勧める人が多いようです。証人を誰かに頼んだり、
公証役場に一緒に行ってもらったりしなければならないので多少手間や費用がかかり
ますが、様式不備の心配もなく、遺言書の紛失や焼失の可能性もないので最も安全な
方式といえます。




相続財産について
   相続税のかかる財産には
    ●相続または遺贈によって取得した財産
    ●実質的に相続または遺贈によって取得したとみなされる財産(生命保険金、
     死亡退職金など)
    ●相続開始前3年以内に贈与を受けた財産

   があります。
 
   相続税のかからない財産には
    ●墓地・墓石・仏壇・祭具
    ●宗教・慈善・学術その他公益を目的とする事業を営む者が、相続等により取
     得した財産で、その公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
    ●生命保険金のうち一定額…500万円×法定相続人数(*注1)
    ●死亡退職金のうち一定額…500万円×法定相続人数(*注1)
    ●相続税の申告期限までに、国、地方公共団体、特定の公益法人などに寄付を
     した財産は非課税とされています。




財産の評価
 相続税計算における主な財産の評価方法はつぎのとおりです。

財産の種類  評価の仕方 おおよその目安
宅地 路線化方式または倍率方式 時価の8〜10割
家屋 固定資産税評価額 時価の5〜6割
(新築の場合)
預貯金 元本+解約利子の手取額 解約手取額
上場株式 @被相続人の死亡した日の終値
A   〃  月の終値の月平均額
B   〃  月の前月の終値の月平均額
C   〃  月の前々月の終値の月平均額
 
 以上@〜Cのいずれか低い額
売却手取額
利付公社債 (発行価額+既経過利子の手取額)と
(上場相場または気配相場+既経過利子の手取額)のいずれか低い方
売却手取額
割引公社債 (発行価額+既経過償還差益)と
(上場相場または気配相場+既経過償還差益)のいずれか低い額
売却手取額
貸付信託 元本+既経過収益の手取額−買取割引料 解約手取額
証券投資信託 日刊新聞等に掲載された基準価格 解約手取額
ゴルフ会員権 通常の取引価格の7割 時価の7割
宝石・貴金属 再購入価格 時価
借入金 要返済額 借入残高




相続税の計算法
   @課税価格を出す
     相続財産−非課税財産−葬式費用−債務=課税価格
 
     被相続人に借入金や入院未払い金などの債務がある場合、マイナス資産
     として算出します。
 
     葬式費用は葬儀代のほか墓地や墓石などの金額を算出します。生命保険や
     死亡退職金は死亡後に発生した財産ですが、みなし財産として相続財産に
     含まれます。その額は、500万円×法定相続人の人数という算式で求めま
     す。
 
   A課税遺産総額を出す
     相続税の課税価格の合計額−基礎控除額(※)=課税遺産総額
     ※ 基礎控除 5000万円+1000万円×法定相続人の数
 
   B相続税の総額を出す
     各法定相続人の法定相続分遺産額×税率−控除額=相続税の総額

相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10%
1000万円超〜3000万円以下 15% 50万円
3000万円超〜5000万円以下 20% 200万円
5000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜3億円以下 40% 1700万円
3億円超〜 50% 4700万円

   C各人の納付相続税額を出す
     Bの相続税の総額を各相続人の課税価格に応じて割る振る−税額控除
     =各人の相続税額




相続税の計算事例


   被相続人は2006年死亡
   相続人   妻、長男、長女
   相続財産 土地家屋・預貯金 1億7000万円
          死亡保険金        5000万円
          死亡退職金        1500万円 
                (合計)  2億3500万円
 
          葬儀費用    300万円
          債務       200万円 
              (合計) 500万円

    @各人の課税価格の合計額を計算する。
       2億3500万円−(500万円 +1500万円 +1500万円) = 2億円
                 ↑     ↑     ↑
             葬儀費用・債務  死亡保険金の  死亡退職金の
                      非課税枠    非課税枠
 
    A正味の遺産税額(課税価格)を求める
       2億円−(5000万円+1000万円×3人)=1億2000万円
                      ↑
              相続税の基礎控除・法定相続人
 
    B法定相続分に応じた税額から相続税額を求める
      ・妻   1億2000万円×1/2  =6000万円   税額 1100万円
      ・長男 1億2000万円×1/2×1/2=3000万円  税額  400万円 
      ・長女 1億2000万円×1/2×1/2=3000万円  税額  400万円
                         相続税の総額 1900万円
     
        ( 6000万円×30%−700万円=1100万円 )
        ( 3000万円×15%− 50万円= 400万円 )

 
    C各人の相続税額を求める
      ・妻  1900万円×1億円/2億円=950万円→0 配偶者の税額低減適用
      ・長男 1900万円×5000万円/2億円=475万円
      ・長女 1900万円×5000万円/2億円=475万円
 
    D納付税額の合計
       0円+475万円+475万円=950万円





相続時精算課税制度
   平成15年度の税制改正で相続時精算課税制度が新設されました。この制度を
   選択すると、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与については2500万円まで
   (住宅取得等資金贈与は親の年齢要件なく3500万円まで)贈与税が特別控除と
   なり非課税となります。

 
  平成15年の課税された被相続人は4万4000人いたそうです。1年で約100万人が
  亡くなるので、相続税を支払う確率は4.4%とごくわずかであることがわかりま
  す。
  すなわち、ほとんどの人は相続税のことを心配しなくていい計算になりますが、
  その立場にいる人はしっかりと勉強をしておく必要があるといえるでしょう。



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