医療制度改革によって高齢者の医療費の自己負担が増える中、シニア世代向けの
医療保険の契約が増えています。
健康状態の告知なしで「誰でも入れる」ものもありますが、その反面、保険料が割高
で、支払い条件も厳しいのが実情です。
今回は、シニア向け医療保険の特徴と加入する時の注意点などを見ていきましょう。
■ 医療保険とは
医療保険は病気やけがなどのリスクに対し金銭面での保障をするものです。
従来生命保険会社が主に取扱っていましたが、最近では新規に参入してきた
損保会社も新たな商品を投入しており、商品の選択肢は拡がっています。
■ 医療保険の基本的な保障
「入院給付金」 病気やけがで入院した場合、1日当りの決まった額を受取り
ます。これが給付金です。
「手術給付金」 所定の手術を受けたときに、種類に応じて入院給付金の10
倍、20倍、40倍の給付金を受取れます。これが手術給付金
です。
「死亡保険金」 被保険者が死亡したときに受取れる死亡保険金もあります。
しかし医療に対する保険が主なので、死亡保険金は50万〜
100万円程度と少ないものがほとんどです。
■ シニアが医療保険に加入するための基本知識
・ 医療保険にはなるべく健康なうちに入っておくことをお奨めします。いざ加
入しようとしたときに病気に罹っていたり既往症があると契約できない場合
があるからです。
・ 当然のことですが、年齢が高くなるほど保険料も上がります。できればなる
べく早目に加入しておいた方が安心です。
・ 保障期間はなるべく長いものにしておきます。長生きできる時代になってき
ましたから。終身タイプのものを一つでも付けておくことをお奨めします。
・ 特約で医療特約をカバーするよりは個別に医療保険に加入した方がいいかも
しれません。高齢になって死亡保障を見直したとき、解約することも考えら
れるのであれば、解約すると特約の部分もなくなってしまいますから。
・ 現役時代は病気やけがで入院すると収入に響く
割合が大きいですが、シニアの場合はそれほど
収入と直結するわけではない、とすればそのあた
りも計算に入れて保障額の選択を行ってくださ
い。
・ 医療保険に入っていない、病気を持っているの
で入れない、加入している保険が満期になって
しまった、そんなシニアのために「無選択保険」
があります。
■ 医療保険加入のポイント
@掛け金 月々の負担額と保障内容のバランスが重要。加入時の年齢が上がる
と 保険料が増えていくのが一般的です。
A給付金額 入院や死亡時の給付金額をチェックしましょう。特に入院時に1日
いくらもらえるかは重要です。入院や死亡の原因によって給付額が
違わないかも確認します。手術時や退院時に給付がある商品です。
B最低入院日数 4泊5日以上の入院で5日目から給付金が出るタイプが多いです
が、最近は1泊2日以上の入院で1日目から出るのもありますか
らよくチェックしましょう。
C給付日数 入院1回当りの給付日数、2回以上入院した場合の通算の給付日数に
ついて上限が設定されているのでよく比較検討しましょう。
D保障期間 一定の年齢に達すると保障がなくなるものが多いですが、最近は一
生保障が続く終身型も増えてきています。
Eその他 掛け捨てが多いですが、解約すると解約返戻金が出るものもありま
す。家族の入院に対応した「家族型」もあります。
■ 無選択保険
通常、生命保険に加入する際には、健康状態などに関する告知または医師による
診査が必要ですが、この保険では告知や医師による診査は必要ありません。
何歳で亡くなっても死亡保険金を受取ることができます。現在「終身保険」と
「医療保険」の2種類があります。一般的な商品と比べて、次のような違いが
あります。
「終身保険」
一定期間内(「契約後2年間」など)に病気等でなくなったっ場合、死亡保障は
支払われません。そのかわり、今までに払い込んできた保険料額分は支払わ
れることになっています。なお、災害死亡の場合は、加入当初から死亡保険金が
支払われます。
会社によって異なりますが、保険料の払込期間を一生涯としている商品が多い
ようです。加入できる死亡保険金額は比較的少額ですが、加入できる年齢は比較
的高く設定している会社が多くなっています。なお、この保険では医療関係の特
約を付加することはできません。
「医療保険」
一定期間内(「契約後90日間」など)に疾病により入院・手術した場合は、給付
金支払いの対象になりません。また、契約前から発病していた病気などで入院・
手術をした場合も支払いの対象とならないことがあるため、加入の際には給付条
件をよく確認することが大切です。
保険期間は5年・10年など定期タイプになっています。加入できる年齢は50代か
らなど比較的高いようですが、一般的な医療保険と比べ1入院の給付限度日数が
短いなどの制約もあります。
各保険会社で契約可能年齢や、保障内容は多少異なるので確認が必要です。
ただ掛け捨てではなく解約返戻金が受取れる点と、死亡保険金額が300万円以下
に設定されている点は、どの無選択型終身保険にも共通しています。
加入前に注意する点は「払込保険料総額が死亡保険金額を上回る分岐点は何歳の
ときなのか」を確認した上で契約するようにしましょう。
(生命保険文化センター)
■ 限定告知型医療保険
無選択型の生命保険の保険料は、健康状態を一切問わない為割高となりました。
そこで登場したのが、限定告知型の生命保険です。告知内容を従来のものより
緩やかにして、生命保険料も従来のものと、無選択型の中間に位置づけた保険と
言えるでしょう。
5項目の告知項目に当てはまらなければ、すでに持病がある人でも入ることが
できます。
@過去2年以内に入院または手術したことがある。
A過去5年以内にがんで入院または手術したことがある。
B今後3ヶ月以内に入院または手術の予定(医者にすすめられている場合、
相談している場合を含む)
C現時点でがんまたは肝硬変と医師に診断または疑いがあると指摘されて
いる。
D現在までに、公的介護保険の要介護認定(要支援を含む)を受けたことが
ある。
(住友生命「千客万頼」より)
過去の病歴は保障の対象外という商品だけでなく、以前の病気が悪くなって入院
や手術をした場合、保険に入った直後から給付金をもらえるというものもありま
す。(ただし、契約日より1年以内の場合、給付金は半額)
代表的な商品としては、住友生命の「千客万頼」がありますが、メットライフ ア
リコからも「ずっとあなたと」や「ずっとスマイル」が発売されました。今後、
増えそうな兆しを感じます。
■ 通常の医療保険から始める
このように最近は、健康に不安があっても、医療保険に加入できる可能性は広が
っています。
しかしながら、保険料の価格は「無選択型医療保険」>「限定告知型医療保険」
>「通常の医療保険」という傾向にありますし、通常の医療保険でも正直に正し
い告知をして加入できればその方が保険料負担も低く、長期的に続けやすいでし
ょう。
そのため、ご自身の健康状態をよく把握されて、まずは通常の医療保険に申し込
みをし、総合保険理店などで複数社当たった上で、加入が厳しかった場合には
「限定告知型医療保険」を、それでも厳しい場合に準備するための手段として
「無選択型医療保険」を検討するという順序で考えるのが合理的な選び方かと
思われます。
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